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忘年会のたしなみ方

年末になり、お酒を飲む機会が多くなります。

お付き合いも大切ですが身体も大切。


上手にお酒の席を楽しみましょう。



 早いもので今年も残すところ1か月となり、忘年会の季節がやってまいりました。そもそも忘年会は、一年の締めくくりとしてその年にお世話になったいろいろな方々と席を共にし、年内の苦労を忘れるために行われる年末行事です。冬の寒さも相まってついつい飲み過ぎてしまい後悔してしまうこともあるのではないでしょうか?お酒の席が多くなってしまうこの時期、今回はお酒について少し触れてみようと思います。お酒は古来より「百薬の長」と呼ばれ、適量での飲酒はストレス解消や食欲増進、動脈硬化を予防するなどの効果がありますが、Jカーブ効果と呼ばれ一日の飲酒量が適量を超えると、肝障害などの体への害が一気に増加します。このことはイギリスのマーモットという学者も「お酒を適量に飲むことで、死亡率は低くなる」ことを発表しました。これはアルコールが血液中の善玉コレステロールを増やし、高血圧、虚血性心疾患、脳卒中などを引き起こす動脈硬化を防ぐ効果につながるからだとされています。

  • アルコールの代謝

    • まず体内に入ったアルコールは胃腸で吸収され、肝臓に運ばれます。肝臓へと運ばれたアルコールは、大部分がアルコール脱水素酵素によって、アセトアルデヒドに分解されます。そしてそのアセトアルデヒドは、アルデヒド脱水素酵素によって酢酸(アセテート)に分解され、またその酢酸は二酸化炭素と水に分解され、最終的には、尿や呼気によって体外に排泄されます。

  • 「二日酔い」って?

    • 二日酔いは、このアセトアルデヒドが分解されずに体内に残った状態で、体重60kgの成人男性で、無毒化できるアルコールの量は、1時間に6~9gですので、日本酒1合(約23gのアルコール)を無毒化するには3~4時間もかかります。そのため飲み過ぎれば二日酔いになってしまいます。【アルコールの分解時間の計算方法:「体重(㎏)× 0.1 = 1時間に分解できる純アルコール量(g)】

  • お酒に強い人、弱い人

    • ではお酒に強い人、弱い人がいるのはどうしてでしょう?アセトアルデヒドを分解するアセトアルデヒド分解酵素(ALDH)には4種類あり、一番主要な働きをしているのがALDH2です。このALDH2には、酵素活性の強いALDH2-1と活性の弱いALDH2-2の2つのサブタイプがあり、両親からこのALDH2のどれか一つずつもらいますので、どの組み合わせを持っているかでお酒に強い・弱いが決まります。

    • ALDH2-1を2つ持っている人はお酒に強い人(45%)、ALDH2-2を2つの人が全く飲めない人(10%)、ALDH2-1とALDH2-2を1つずつ持っている人(45%)は飲めないわけではありませんが、あまり強くない人と言うことになります。自分がどの型を持っているかは親から受け継ぐ遺伝子の組み合わせによって決定され、後天的に変わることはありません。

    • 飲めるタイプの人はどうしても酒量が増えてしまうので、アルコール性肝臓障害を起こしやすくなり、アルコール性肝臓障害の85%がこのタイプの方ですので注意も必要です。

  • お酒が強くなる?

    • アルコールの代謝には、もう一つミクロゾームエタノール酸化系という代謝経路があり、お酒を飲み続けるとこの代謝能力が向上します。この経路が関与するのは、アルコール代謝の20%ですので、いくら訓練してもお酒の弱い人が酒豪にはなりません。

  • γ-GTP(ガンマGTP)とは

    • 飲酒量の多い人には、γ-GTP(ガンマGTP)の数値が肝機能の健全度のバロメーターになります。γ-GTPは肝臓の中にある酵素のことで、一般的に飲酒量が多ければ、γ-GTPは上がります。健康診断のときには、このγ-GTPの数値に注目したいもの。男性で通常60、女性で30を超えるような数値になったら要注意です。お酒は控えてください。

  • 週に2日は休肝日を

    • 適量と言っても毎日の飲酒は、やはり肝臓に負担をかけてしまいますので週に2日は肝臓を解放して休める、いわゆる「休肝日」を設けましょう。そのことによって肝臓への負担を軽減するだけでなくアルコール依存症を防ぐ効果もあります。この休肝日を設けることは身体的にも精神的にも大切なことです。


アルコール血中濃度と酔い


血中濃度(%)

酒量


酔い状態

脳 

爽快期

0.02~0.04

ビール(中びん~1本)

日本酒(~1合)

ウィスキー(シングル~2杯)

さわやかな気分になる

皮膚が赤くなる

陽気になる

判断力が少し鈍る

ほろ酔い期

0.05~0.10

ビール(中びん1~2本)

日本酒(1~2合)

ウィスキー(シングル~2杯)

ほろ酔い気分になる

手の動きが活発になる

抑制がとれる(理性が失われる)

体温があがる

脈が速くなる

酩酊初期

0.11~0.15

ビール(中びん3本)

日本酒(3合)

ウィスキー(ダブル3杯)

気が大きくなる

大声でがなりたてる

怒りっぽくなる

立てばふらつく

酩酊期

0.16~0.30

ビール(中びん4~6本)

日本酒(4~6合)

ウィスキー(ダブル5杯)

千鳥足になる

何度も同じことをしゃべる

呼吸が速くなる

吐き気・嘔吐がおこる

泥酔期

0.31~0.40

ビール(中びん7~10本)

日本酒(7合~1升)

ウィスキー(ボトル1本)

まともに立てない

意識がはっきりしない

言語がめちゃめちゃになる

昏睡期

0.41~0.50

ビール(中びん10本超)

日本酒(1升超)

ウィスキー(ボトル1本超)

ゆり動かしても起きない

大小便はたれ流しになる

呼吸はゆっくりと深い

死亡

社団法人アルコール健康医学協会「新適正飲酒の手引き お酒と健康ライフ」


お酒とどのように付き合っていけばよい?

では「正しいお酒の飲み方」とはどのようなものでしょうか?それをわかりやすく整理し、お酒の適正な飲み方やマナーを周知することを目的として「適正飲酒の10 か条」(平成20 年5 月改訂)で定められています。1 談笑し楽しく飲むのが基本です2 食べながら適量範囲でゆっくりと3 強い酒薄めて飲むのがオススメです4 つくろうよ週に二日は休肝日5 やめようよきりなく長い飲み続け6 許さない他人への無理強いイッキ飲み7 アルコール薬と一緒は危険です8 飲まないで妊娠中と授乳期は9 飲酒後の運動・入浴要注意10 肝臓など定期健診を忘れずに

(社団法人アルコール健康医学協会)


「健康日本21」における「節度ある適度な飲酒」

厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」には、「節度ある適度な飲酒」について記載されており、1日平均純アルコールで約20g程度であるとされています。また、以下のことにも留意する必要があるとされています。



1. 女性は男性よりも少ない量が適当である


2. 少量の飲酒で顔面紅潮を来す等アルコール代謝能力の低い者では通常の代謝能力を有する人よりも少ない量が適当である


3. 65歳以上の高齢者においては、より少量の飲酒が適当である


4. アルコール依存症者においては適切な支援のもとに完全断酒が必要である


5. 飲酒習慣のない人に対してこの量の飲酒を推奨するものではない


お酒の種類

ビール


(中瓶1本500ml)

清酒


(1合180ml)


ウイスキー・ブランデー


(ダブル60ml)

焼酎(35度)


(1合180ml) 

ワイン


(1杯120ml)

アルコール度数

5%

15%

43%

35%

12%

純アルコール量

20g

22g

20g

50g

12g

(厚生労働省)


お酒と一緒に食べたいおつまみ

飲酒の基本は、食べながらゆっくり飲むことが大切です。食べながら飲むことで、アルコールの吸収を遅らせ、肝臓への負担を少なくします。 スタートしたら、まず二日酔いになりにくいおつまみを選び、アルコールの代謝を助け肝機能を高めるおつまみで体への負担を和らげましょう。では次は、お酒を控えたいがどうしてもお酒の席で飲まなければいけない、といった場合などお酒と一緒に食べると良い料理、おつまみについて触れてみます。肝臓でのアルコールの分解に必要な酵素はたんぱく質で出来ているため、たんぱく質の摂取で肝機能の改善や肝細胞の代謝も促進します。また体の中で作り出すことのできない必須アミノ酸や肝臓の代謝に不可欠にビタミンB1、ビタミンCも必ず摂りたいものです。

  • 大豆のおつまみ(枝豆)

    • 二日酔いの原因であるアセトアルデヒドの分解を促進してくれるビタミンCが豊富で、アルコールを飲むことで不足するビタミンB1、大豆に豊富に含まれているサポニン(コレステロールや中性脂肪を減らす作用)、大豆イソフラボン(活性酸素を除去し老化を防ぐ作用)なども豊富です。

  • 豆腐料理(湯豆腐、冷奴)、白身魚の料理

    • とうふ(大豆)や白身魚は良質のたんぱく質を豊富に含み、低脂肪なので是非摂取したい食品。良質のたんぱく質は、肝細胞再生に必須です。

  • ごま料理

    • ごまに多く含まれるセサミンという成分に、アルコールの分解促進作用。

  • 鶏肉のおつまみ(ささみの刺身)

    • 鶏肉のタンパク質には、必須アミノ酸のメチオニンという成分が多く含まれ、血液中のアルコールの分解を助ける働きがあります。市販されている二日酔いのお薬にも、このメチオニンが配合されています。

  • 牛乳やチーズ・ヨーグルト

    • 胃腸の粘膜保護をするため、飲酒前に食べるのが効果的。 チーズのたんぱく質は、100%の吸収率。

  • スティック野菜(大根サラダ)

    • お酒によって失われたミネラル・ビタミンの補給。大根に含まれるアミラーゼが消化吸収を促進し、アセトアルデヒドの排出を促してくれます。

  • 貝類のおつまみ(アサリ、しじみの酒蒸し)

    • 貝類に含まれるビタミンB12やタウリン・亜鉛が、肝細胞の再生を促進し、肝機能を回復させる働きがあります。

  • 酢の物のおつまみ(キノコやきゅうりの酢の物、たこ酢)

    • アセトアルデヒドは、アセトアルデヒド脱水素酵素(AHDL)によって酢酸となり、クエン酸回路を経て二酸化炭素と水に分解されます。クエン酸の効果で、クエン酸回路が活発になるとアルコール代謝亢進。またタコには、あさりやシジミと同じようにタウリンが多く含まれ、肝機能の回復を補助します。


またアルコールに対する自分の体質を知る目的で、未成年者も含めお酒を飲まずに自分がお酒に強いか弱いかを判別できる「パッチテスト」もありますので活用してください。(エタノールパッチテスト)お酒はストレス解消やなど、人間関係の潤滑油として大きな役割を果たしてくれます。しかし適量を守らないと、肝機能障害や高脂血症、急性胃炎など多くの疾病や生活習慣病を招く恐れがあります。「過ぎたるは及ばざるがごとし」飲み過ぎには重々注意してください。

 
 
 

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