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漢方シンフォニー

呉茱萸湯(ゴシュユトウ)



別名「茱萸湯」とも呼ばれる頭痛や嘔吐に用いる漢方薬


 漢方の「傷寒論」「金匱要略」という古典書に載っている処方。
、現在でも使用される漢方薬の数ある処方のでも、特に優れた漢方処方のひとつです。この処方は4種類の生薬「ゴシュユ、ニンジン、タイソウ、ショウキョウ」から構成されており、処方の名前は原料主生薬のゴシュユに由来している。

効能・効果


「体力中等度以下で、手足が冷えて肩がこリ、ときにみぞおちが膨満するものの次の諸症:頭痛、頭痛に伴うはきけ・嘔吐、しゃっくり 」
本処方の適応証は、虚証(虚弱)、寒証(冷え)、湿証(水分停滞)、升症(頭痛・嘔吐)となり、上半身で生じる頭痛や肩こり、あるいは嘔吐をおさえる作用がこの薬の処方目的となります。

原典【傷寒論】


 「穀を食すれば嘔せんと欲する者は、陽明に属する也、呉茱萸湯之を主る。湯を得て反って劇しき者は、上焦に属する也。」
「少陰病,吐利し,手足逆冷して煩燥し,死せんと欲するものは呉茱萸湯之を主る」「乾嘔して涎沫を吐し,頭痛をするものは呉茱萸湯之を主る」
「嘔して胸満する者は,(呉)茱萸湯之を主る」

傷寒論 陽明病 247
「食穀欲嘔、属陽明也、呉茱萸湯主之、得湯反劇者、屬上焦也。」
呉茱萸湯方
「呉茱萸 1升洗、人参 3両、生姜 6両切、大棗 12枚擘」
右四味、以水七升、煮取二升、去滓、温服七合、日三服。

傷寒論 少陰病 313
「少陰病、吐利、手足逆冷、煩躁欲死者、呉茱萸湯主之。」

傷寒論 厥陰病 381
「乾嘔吐涎沫、頭痛者、呉茱萸湯主之。」

ゴシュユ
Evodia rutaecarpa (juss.) Benth.」(みかん科)
【分布】中国原産、享保年間に日本に渡来し、薬木として各地に植栽される落葉低木。
【形態】樹高3mになる。初夏、円すい花序を出し、緑白色の小さな花をつける。
【薬用部位】果実。夏~秋に成熟した果実を採集し、日干しにする。
【成分】インドールアルカロイドのエボジアミン、デヒドロエボジアミン、ルテカルピン、ヒゲナミン、エボカルピン、ショシュユ酸などを含む。苦味成分としてリモニン、特異の香気は鎖状テルペンに基づく。
【薬効薬理】呉茱萸には気分を落ち着かせ、痛みを止める作用があり、頭痛、吐き気、口内炎、歯痛、湿疹などに用いられる。その他浴場料としても用いられる。


ニンジン「Ginseng radix 」(うこぎ科)
【分布】朝鮮半島、中国、ウスリー、日本では長野、福島、島根で栽培される多年草。
【形態】草丈は60cm前後。根は直下し、根茎は通常短い。花期は夏。茎の先端に淡緑色の小さな花を多数つける。
【薬用部位】根。苗床に播種後5~6年目の8~9月、地上が枯れる頃根を掘り上げ、水洗いしながら表皮を除き日干しにする(←白参)か、水洗後、約3時間蒸し、乾燥室に入れ火力乾燥する(←紅参)。
【成分】サポニンとしてジンセノイドRo、Ra~Rh、他にパナキシノール、β-エレメンなど。
【薬効薬理】ジンセノサイドにたんぱく質、DNA合成促進作用、サポニン分画に抗疲労、血糖降下作用などの有する。漢方では、強壮、強心、健胃補精、鎮静薬として、食用不振、消化不良、下痢、嘔吐、衰弱などに用いられる。


タイソウ「Zizyphus jujuba Mill. var. inermis (Bge.) Rehd.(くろうめもどき科)
【分布】ヨーロッパ南部、アジア西南部原産で、日本には中国から渡来し、日本各地で広く植栽される落葉小高木。
【形態】樹高10m。しばしば枝節にとげをつける。葉は羽状複葉状に互生し、卵形から卵状皮針形で長さ2~6cm、鈍頭か、ときに凹頭できょ歯縁。花期4~5月。核果は楕円形で長さ2~3m。
【薬用部位】果実。果実が成熟しきらないときに採集して、蒸してから日干しにする。
【成分】糖、有機酸類、トリテルペノイドのオレアノール酸、オレアノン酸、マスリニン酸、ベツリン酸、サポニンのチチフスサポニンⅠ、Ⅱ、Ⅲ、サイクリックAMPなどを含有。
【薬効薬理】アデニルサイクラーゼ活性、フォスフォジエステラーゼ活性が認められているほか、鎮静、強壮、緩和、利尿薬としてヒステリー症、神経衰弱などに応用される。


ショウキョウ
Zingiber officinale (L.) Rose.」(しょうが科)
【分布】熱帯アジアの原産で、日本には2600年以上前に渡来し、食用、薬用、調味料の原料用に各地で栽培される多年草。
【形態】草の丈は30~50cm。根茎は多肉質で節から偽茎を直立する。日本では花をつけないが、暖地ではまれに開花する。
【薬用部位】根茎(生姜、乾生姜、乾姜)。根茎を堀上げ、水洗い後そのまま使用(生姜)か皮を除いて石灰粉をまぶし、日干しにする(乾生姜、生姜)。また蒸して乾燥する(乾姜)。
【成分】根茎に辛味成分のジンゲロン、ショウガオール、ジンゲロール、精油のジンギベロール、ジンギベレン、α-、β-、γ-ビサボレン、α-、β-クルクメンなどを含む。
【薬効薬理】「生姜には唾液中のジアスターゼの作用を促進し、また強い殺菌作用を示し、特にジンゲロン、ショウガオールに強い作用がみられる。乾姜にも辛味性健胃作用がある。生姜は芳香性健胃、矯味、矯臭、食欲増進薬として腹痛、腰痛などにも用いられる。